リード文
「仮想通貨の取引所、結局どこがいいの?」
この質問への答えを、私は9年かけて、たぶん日本でもかなり珍しい方法で確かめてきました。国内外あわせて19の取引所すべてに実際に口座を開設し、入出金し、売買してきたのです。
2017年8月に2.05BTC(当時846,288円)を買って市場に飛び込んでから9年。その間にマイニングへ総額2,353万円を投資して1,120万円の赤字で撤退し、取引所のハッキングも破綻も廃業も、市場の当事者として見てきました。19口座は自慢ではなく、その9年間の試行錯誤の「痕跡」です。
先に結論を言います。19口座を開設してわかった最終結論は「普通の人に必要なのは2〜3口座だけ」です。ただし、その2〜3口座を何にするかで、取引コストも資産の安全性も大きく変わります。
この記事は、19社を「今も使う/持っているだけ/閉鎖・撤退済み」に分類して総括し、用途別の最適解と、初心者が持つべき現実的な口座構成までを一気にまとめた、当ブログの取引所レビューの集大成です。
目次(自動生成)
1. なぜ19口座も開設したのか|9年の変遷史
最初に断っておくと、19口座は計画的に増えたわけではありません。振り返ると、増えた理由は時期ごとにはっきり分かれています。
| 時期 | 口座が増えた理由 |
|---|---|
| 2017〜2018年 | バブル期。「あの銘柄はあそこでしか買えない」で国内外に一気に増加 |
| 2018〜2019年 | ハッキング事件を受けた分散目的。1社集中が怖くなった |
| 2019〜2022年 | マイニング期。採掘した16種類の通貨の換金先・送金先として追加 |
| 2022年〜現在 | 整理期。使う口座を絞り込み、新規は比較検証目的のみ |
特に大きかったのはマイニングです。私はAwesome MinerやNiceHashで「その時いちばん儲かる通貨」を自動選定して掘っていたので、BTCやMONAからGRIN、RVNのようなニッチ通貨まで16種類が手元に来ました。ニッチ通貨は売れる場所が限られるため、換金ルートを確保するたびに口座が増えていったのです。
そして2018年以降は、Coincheck・Zaifと続いたハッキング事件で「1つの取引所に資産を集中させる怖さ」が骨身に沁みました。分散のための口座、比較検証のための口座——そうして気づけば19社です。
つまりこの19口座には、バブル・ハッキング・マイニング・破綻という9年間の市場の歴史がそのまま刻まれています。だからこそ、この総棚卸しには意味があると思っています。
2. 19社の全リストと3分類【総覧表】
19社を「今も使う/持っているだけ/閉鎖・撤退・破綻」の3つに分類しました。
【要オーナー確認: 19社の内訳と分類(実際の口座リストとの照合)】
| 分類 | 取引所 | 一言メモ |
|---|---|---|
| 今も使う(6社) | Coincheck | 積立と初心者導線。アプリの分かりやすさは今も随一 |
| 〃 | bitbank | アルトコインの板取引メイン。板の厚さが武器 |
| 〃 | GMOコイン | 入出金・送金コストの低さで実用枠 |
| 〃 | SBI VCトレード | 送金ハブ+ステーキング。手数料体系が優秀 |
| 〃 | BITPOINT | 手数料の安さでサブ枠 |
| 〃 | BitTrade | 他社にない銘柄を買う「専門店」枠 |
| 持っているだけ(8社) | bitFlyer | 老舗の安心感。ただし私の用途では出番減 |
| 〃 | 楽天ウォレット | ポイント購入を検証後、常用には至らず |
| 〃 | OKJ | 独自銘柄の検証用。利用は限定的 |
| 〃 | Zaif | 2018年事件以前はよく使用。今は残高最小限 |
| 〃 | Binance | 海外最大手。日本居住者向けの体制変更もあり距離を置く |
| 〃 | Bybit | 海外系。検証用に開設、常用せず |
| 〃 | KuCoin | ニッチ銘柄検証用。今は非常用 |
| 〃 | Poloniex | 2017年当時のアルト売買先。今は実質休眠 |
| 閉鎖・撤退・破綻(5社) | DMM Bitcoin | 2024年不正流出→2025年廃業。口座はSBI VCトレードへ移管 |
| 〃 | Liquid(旧QUOINE系) | 買収・再編の末にサービス消滅 |
| 〃 | Kraken | 日本市場から撤退。資産は事前に引き上げ |
| 〃 | Bittrex | 米国事業の清算で利用不能に |
| 〃 | FTX | 2022年破綻。世界中を巻き込んだ崩壊劇 |
※各社の状況は2026年7月時点の調査に基づきます。サービス内容は変わるため、最新情報は各公式サイトで確認してください。
この表でまず注目してほしいのは分類の比率です。19社のうち、今も使っているのは6社だけ。そして5社はもうこの世に存在しないか、日本から撤退しました。約4分の1が消えた——これが9年間の現実です。
3. 分類①「今も使う6社」|生き残った理由は明確
6社が生き残った理由は、突き詰めると「その取引所にしかない強みが1つ以上ある」ことです。
- Coincheck: アプリの分かりやすさと積立サービス。「迷わず操作できる」ことは初心者期を過ぎても価値があります。個別レビューは別記事で書いています
- bitbank: アルトコインの板取引の充実。販売所を避けて板で買う私のスタイルでは主力です(レビュー別記事あり)
- GMOコイン: 入出金・送金まわりのコストの低さ。資産を動かす人ほど効きます
- SBI VCトレード: 送金無料を活かした「送金ハブ」+保有するだけのステーキング。詳細は別記事(SBI VCトレード本音レビュー)に書いた通りです
- BITPOINT: 手数料の安さ。サブ口座として堅実(レビュー別記事あり)
- BitTrade: 国内最多クラスの取扱銘柄。「ここにしかない銘柄」のための専門店です(レビュー別記事あり)
逆に言えば、「なんとなく大手だから」だけの理由で使い続けている口座は1つもありません。全部の機能がそこそこ良い1社を探すより、尖った強みを組み合わせるほうが、コストも利便性も明確に上——これが19口座で確かめた運用の実感です。
4. 分類②「持っているだけの8社」|使わなくなった理由にこそ価値がある
「悪い取引所だから使わなくなった」とは限りません。使わなくなった理由を正直に分解すると、取引所選びの本質が見えてきます。
- 用途が消えた(Poloniex・KuCoinなど): マイニングやアルト検証という当時の用途がなくなれば、口座も休眠します。取引所の価値は「自分の用途」とセットでしか存在しません
- より良い代替が現れた(bitFlyer・楽天ウォレットなど): どの機能を取っても「その用途の最適解」が他にある状態になると、自然に出番が消えます。相対評価の世界です
- 信頼の毀損・環境の変化(Zaif・海外勢): 2018年のZaif事件は、私が実際に使っていた取引所で起きたハッキングでした。また海外取引所は、日本居住者への規制環境の変化で「使い続けるリスク」を感じて距離を置いたものがあります
ここで強調したいのは、休眠口座には「リスクだけ残ってリターンがない」という問題があることです。残高を置き去りにすれば流出・破綻リスクは負い続けますし、口座が多いほどパスワード管理も税務の取引履歴収集も面倒になります。使わない口座の残高は引き上げる——別記事(取引所破綻の歴史と資産防衛)で書いた「出金習慣」は、この8社から学んだことです。
5. 分類③「消えた5社」|口座が使えなくなる日は本当に来る
19社のうち5社は、破綻・廃業・撤退でもう使えません。1社ずつの顛末が、そのまま教訓集になっています。
- FTX(2022年破綻): 世界2位級がわずか1週間で崩壊。「規模=安全」ではないことの決定的な証明でした
- DMM Bitcoin(2024年流出→2025年廃業): 国内大手・規制強化後でも約482億円の流出は起きました。顧客資産は保証されたものの、廃業と口座移管で資産が自由に動かせない期間が発生。「補償される=無傷」ではありません
- Kraken(日本撤退): 破綻でなくても、事業判断ひとつで「日本から使えなくなる」ことがあります。撤退アナウンスから期限までに資産を動かす必要がありました
- Bittrex・Liquid: 買収・清算・再編の末のサービス終了。海外系・再編含みの取引所は、ある日突然ゲームのルールが変わります
5社に共通する教訓はただ1つ。「取引所はインフラではなく、一企業のサービスにすぎない」ということです。銀行のような感覚で全資産を置いてはいけません。各事件の詳細と対策は別記事(取引所破綻の歴史と資産防衛)で深掘りしています。
6. 19口座でわかった「取引所選び5つの真実」
ここからは、19社の体験を横断して見えてきた法則をまとめます。
真実① コストの本丸は手数料ではなくスプレッド
私が各社の販売所で実測してきたスプレッドは5.5〜6.3%。取引所(板取引)なら0.01〜0.015%です。100万円分買うと、販売所では5〜6万円が最初から消えます。
つまり「取引手数料無料!」の看板を比較する前に、板取引で買えるかどうかを確認するほうが数百倍重要です。詳細は別記事(販売所と取引所の違い・スプレッド実測)をどうぞ。
真実② 「手数料無料」は入口にすぎない|総コストで見る
取引・入金・出金・送金・スプレッド。お金の流れの全段階にコストは潜んでいます。取引が無料でも送金で数千円取られれば逆転します。自分の使い方(買うだけ? 送金する? 頻度は?)を先に決めてから、その動線の総コストで比較するのが正解です。
真実③ アプリの使いやすさは「続けやすさ」に直結する
意外かもしれませんが、9年続けてきて痛感する真実です。操作に迷うアプリは、確認の頻度が下がり、積立の設定も後回しになり、結果として投資自体が続きません。スペック表に出ない「ストレスのなさ」は、長期投資では立派な性能です。
真実④ 取引所は消える。だから複数口座は「保険」である
19社中5社が消えた事実がすべてです。さらに言えば、大相場の日に取引所のサーバーが落ちて売買できない、という経験も一度や二度ではありません。破綻対策としても障害対策としても、口座は複数が大前提です。
真実⑤ ただし口座は多すぎても駄目|管理コストは実在する
19口座の管理は、正直に言って大変です。パスワード・2段階認証の管理、年1回の残高棚卸し、そして確定申告時には全口座の取引履歴を集める作業が待っています。口座数が増えるほど税務の手間は確実に増えます。19口座は職業病であって、推奨ではありません。
7. 用途別の最適解|9年目の結論マップ
「では、どの用途にどの口座か」。19社を使い比べた現時点の結論です。
| 用途 | 最適解 | 理由 |
|---|---|---|
| 初心者の最初の1口座 | Coincheck | アプリの分かりやすさ。迷わないことが最初は最重要 |
| 毎月の積立 | Coincheck(つみたて) | 自動積立の設定が簡単で「ほったらかし」が成立する |
| アルトコインの板取引 | bitbank | アルトの板の厚さは国内随一クラス |
| マイナー銘柄の購入 | BitTrade | 国内最多クラスの取扱銘柄。他にない銘柄はここ |
| 送金ハブ(ウォレット・他所への発射台) | SBI VCトレード | 送金・入出金のコストの低さが決定的 |
| コスト重視のサブ枠 | GMOコイン/BITPOINT | 手数料体系が堅実。バックアップにも |
※各社の仕様・手数料は2026年7月時点の調査に基づきます。変更されることがあるため、口座開設前に公式サイトで最新情報を確認してください。
それぞれの詳しい使用感は、各社の個別レビュー記事(SBI VCトレード・BITPOINT・楽天ウォレット・BitTradeほか、順次公開中)に書いています。この記事はその「地図」として使ってください。
8. 結局、初心者は何口座持てばいいか|「メイン1+サブ2」
19口座試した人間の最終結論は、拍子抜けするほどシンプルです。
メイン1口座+サブ2口座の計3口座。これで実用上の課題はほぼすべて解決します。
- メイン(1社目): 日常の購入・積立用。初心者なら操作に迷わないことを最優先に
- サブ①(2社目): 板取引用。販売所のスプレッドを回避し、取引コストを数百分の1にする
- サブ②(3社目): 送金ハブ兼バックアップ。送金コストが安い取引所を。メインの障害・万一の破綻時の避難先にもなる
この構成なら、①コスト最適化(真実①②)、②使いやすさ(真実③)、③破綻・障害への保険(真実④)、④管理の手間の抑制(真実⑤)が全部成立します。
順番も大事です。最初から3口座作る必要はありません。まず1社目で少額の売買に慣れ、買う金額が増えてきたら板取引用の2社目、資産を守る意識が出てきたら3社目——数か月かけて育てていけば十分です。口座開設はどこも無料で、審査は概ね即日〜数営業日。口座開設で失敗しないポイントは別記事にまとめています。
9. よくある質問
Q1. 口座をたくさん作ると審査やクレジットカードに影響しますか?
A. 暗号資産取引所の口座開設は融資審査ではないため、信用情報機関への照会は基本的にありません。19口座作った私も、その点で困った経験はありません。
Q2. 複数口座だと確定申告は大変になりませんか?
A. 取引履歴の収集先が増えるぶん手間は増えます。ただし2〜3口座なら損益計算ツールで十分管理できる範囲です。なお暗号資産の利益は原則として雑所得で、会社員でも年間の利益が一定額を超えると確定申告が必要です。制度は変わる可能性があるため、最新情報の確認と、金額が大きい場合は税理士への相談をおすすめします。
Q3. 海外取引所は使ったほうがいいですか?
A. 私は19社のうち海外系も使ってきましたが、FTX破綻と規制環境の変化を経て、資産の置き場所としては国内登録業者を中心にするのが現在の結論です。海外にしかない銘柄・機能が明確に必要な人以外、急いで手を出す理由はありません。
Q4. 使っていない口座は解約すべきですか?
A. 残高を引き上げたうえで、今後使う見込みがなければ解約が理想です。最低限、残高ゼロ・2段階認証維持・登録メール監視は続けてください。「放置口座の残高」がいちばん危険です。
Q5. この記事のおすすめは今後も変わりませんか?
A. 変わり得ます。9年間で「最適解」は何度も入れ替わってきました。手数料改定・新サービス・撤退は常に起こるので、本記事は状況が変わり次第更新していきます。
10. まとめ|19口座の授業料を、あなたは3口座で受け取れる
9年・19口座の総棚卸しを、最後に凝縮します。
- 19社のうち今も使うのは6社、消えたのは5社。取引所は選び直し続けるもの
- コストの本丸はスプレッド。板取引で買えるかがすべての起点
- 取引所は一企業のサービス。複数口座+出金習慣が資産防衛の基本
- 実用の最終回答は「メイン1+サブ2」の3口座。最初は1社目からで十分
私は口座開設に費やした時間も、ハッキングに肝を冷やした夜も、マイニングの1,120万円の赤字も、全部この結論のための授業料だったと思うことにしています。あなたはこの記事を読んだ時点で、その授業料を払わずに結論だけ持っていけます。
まずはメインの1口座から。あなたの用途に合う取引所を、上の「用途別最適解マップ」から選んでみてください。
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