リード文
まず、告白から始めます。
当サイトの最初の記事「仮想通貨の始め方」で、私は「まずは数千円からでいい」と書きました。それは今でも初心者への正しいアドバイスだと思っています。
でも、私自身の最初の一歩は違いました。
2017年8月13日。私はビットコインを2.05BTC、846,288円で購入しました。 1BTCあたり約41.3万円。数千円のお試しどころか、いきなり84万円の一括購入です。
この記事が公開される週の2026年8月13日で、あの日からちょうど9年になります。節目に合わせて、初購入の記録、当時の市場の空気、その後9年間で何が起きたか、そして「もしあのまま持ち続けていたら」の試算まで、全部書きます。
自慢話ではありません。むしろこの9年間には、総投資2,353万円のマイニング事業を1,120万円の赤字で畳んだ大失敗も含まれています。成功も失敗も含めた「9年分の実物大の記録」として読んでください。
目次(自動生成)
1. 2017年8月13日の記録|レシートを晒す
まず、事実だけを表にします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 購入日 | 2017年8月13日 |
| 購入数量 | 2.05 BTC |
| 支払額 | 846,288円 |
| 1BTCあたりの単価 | 約413,000円 |
846,288円。中古の軽自動車が買えるくらいの金額です。当時の私にとっても、間違いなく大金でした。
なぜ「数千円のお試し」ではなく84万円を一度に入れたのか。振り返って正直に言えば、緻密な分析があったわけではありません。当時の相場は連日高値を更新していて、「この波に乗り遅れたくない」という気持ちが半分、ブロックチェーンという技術への興味が半分。今の私が見たら「一括で入れるのはリスク管理として推奨しない」と助言するタイプの買い方です。
それでもこの846,288円が、その後9年間の投資人生——マイニング事業への参入と撤退、19取引所の開設、いくつもの暴落——すべての始まりになりました。
2. 2017年8月の空気|「億り人」前夜の熱気
いま振り返ると、2017年8月は暗号資産市場の歴史でも特異な月でした。
- 8月1日: ビットコインが分裂し、ビットコインキャッシュ(BCH)が誕生。「分裂したら価値が下がる」という予想に反し、その後BTCは上昇
- 相場: 年初に約10万円だった1BTCが、8月には40万円台へ。わずか半年余りで4倍
- 世間: テレビや新聞ではまだ「怪しい投資」の扱い。しかしネット上では熱狂が始まっていた
私が買った8月13日は、まさに分裂騒動が終わって「懸念材料が消えた」と市場が沸いていたタイミングでした。
ちなみに、買って早々に洗礼も受けています。翌9月には中国当局がICO禁止と国内取引所の閉鎖方針を打ち出し、相場は急落。一時は私の購入単価を割り込む場面もありました。買って1ヶ月で含み益が消える——今思えば、これがこの世界の「通常運転」を教えてくれた最初の授業でした。
そしてこの4ヶ月後の2017年12月、1BTCは200万円を超え、「億り人」という言葉が流行語になります。私の2.05BTCも、購入額84万円に対して年末には評価額400万円超——買った直後に5倍近くまで膨らむという、投資の入口としてはあまりに刺激的な体験をすることになりました。
ただし先に言っておくと、この「最初の成功体験」こそが、のちの判断を狂わせる毒にもなりました。それは後述します。
3. その後の9年|保有・売買・マイニング転戦の遍歴
初購入から9年間の遍歴を、時系列でダイジェストします。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2017年8月 | 2.05BTCを846,288円で初購入。同月、マイニング事業にも参入 |
| 2017年12月 | バブル絶頂。1BTC=200万円超え |
| 2018年 | バブル崩壊。1BTCは30万円台まで下落。マイニングは月次16万円のピークも |
| 2019〜2020年 | 「冬の時代」。マイニングの電気代を稼ぐ日々 |
| 2021年 | 再ブレイク。1BTC=700万円超え。マイニング月次収益ピーク約24万円 |
| 2022年9月 | マイニング撤退を決断(5年1ヶ月・最終収支▲1,120万円) |
| 2023年〜 | 現物の長期保有へ回帰 |
| 2026年8月 | 初購入から9年 |
熱に浮かされてマイニングへ
初購入と同じ2017年8月、私はマイニング事業にも足を踏み入れました。「相場で買うより、掘った方が安く手に入るのでは」という発想です。最終的にGPU56台・ASIC5台、総投資2,353万円という規模まで拡大し、5年後に1,120万円の赤字で撤退しました。この顛末は別記事で全データを公開しています。
ここで重要なのは、マイニング期間中、掘った暗号資産の多くを電気代の支払いのために都度売却していたことです。月10〜15万円の電気代は相場に関係なく発生し続けます。掘る→売る→電気代を払う——このサイクルが、後から見れば最大の失敗でした。
「売らずに持つ」ができなかった9年
9年間を一言で総括するなら、「買う判断は悪くなかったが、持ち続ける設計ができていなかった」です。2017年に41.3万円でBTCを買った判断そのものは、結果的に正しかった。しかし事業の資金繰りに追われ、暗号資産を「保有し続ける資産」ではなく「換金する在庫」として扱った期間が長すぎました。
4. もし2.05BTCをガチホしていたら|9年後の試算
では、あの日の2.05BTCを一切売らずに持ち続けていたらどうなっていたか。歴史上の確定した節目価格で試算してみます。
| 時点 | 1BTCの価格(概算) | 2.05BTCの評価額 | 購入額846,288円との比較 |
|---|---|---|---|
| 2017年12月(バブル絶頂) | 約200万円 | 約410万円 | 約4.8倍 |
| 2018年12月(バブル崩壊の底) | 約40万円 | 約82万円 | ほぼ購入額に逆戻り |
| 2021年11月(当時の最高値圏) | 約770万円 | 約1,580万円 | 約18.7倍 |
| 1BTC=1,000万円で計算した場合 | 1,000万円 | 2,050万円 | 約24倍 |
※価格は当時の報道等に基づく概算です。また執筆時点のレートでの評価額は相場により変わるため、あえて確定した過去の節目で計算しています。
84万円が、ただ持っているだけで2,000万円になり得た——数字で見ると強烈です。ただし、この表には2018年に評価額が購入額近くまで逆戻りしている行があることも見逃さないでください。約5倍→ほぼ元本→18倍。この乱高下を、何もせず9年間座って見ていられる人は、実際にはほとんどいません。
「ガチホしていれば儲かった」は、9年分の暴落に耐え続けた場合にだけ成立する結果論です。私はマイニングの資金繰りという事情もあり、それができませんでした。
5. 最初の成功体験という毒|9年目の自己分析
冒頭で触れた「毒」の話をします。
買った直後に5倍近くまで膨らんだ最初の体験は、私に「暗号資産は上がるものだ」という感覚を刷り込みました。その全能感のまま、私はマイニングへの投資を2,353万円まで膨らませていきます。もし最初の購入が数千円で、小さく学びながら進んでいたら、あそこまで一点集中はしなかったかもしれません。
だからこそ、当サイトの最初の記事では「数千円から始めよう」と書きました。矛盾しているようで、していません。84万円から始めて痛い目を見た人間だからこそ、数千円から始めることの価値を知っているのです。
初心者向け記事で私の初購入額を伏せていたのは、「84万円で始めた人の話」が初心者への再現性あるアドバイスにならないと考えたからです。ただ、9周年の節目に、種明かしをしておくべきだと判断しました。実体験を武器にするサイトが、自分の入口をぼかしたままではフェアではないので。
もうひとつ、9年目だから言えることがあります。当時の私は「41.3万円は高値掴みではないか」と何日も悩みました。しかしその後の9年で、41.3万円という価格が話題になったことは一度もありません。長期で見れば、入口の数万円の差より「その後どう振る舞ったか」の方が圧倒的に結果を左右する。悩む場所を間違えていたのです。
6. 9年目の結論|これから始める人への現実的アドバイス
2.05BTC・846,288円から始まった9年間を踏まえて、これから始める人に伝えたいことを3つに絞ります。
① 一括で大金を入れない。ただし「始めない」のはもっと惜しい
私のように熱に浮かされて一括購入するのはおすすめしません。一方で、9年間市場を見てきて確信しているのは、「少額でも当事者になった人と、外から眺めていた人では、得られる理解がまるで違う」ことです。数千円でいい。まず当事者になってみてください。
② 「売らなくていいお金」で買う
私の最大の後悔は、掘った資産を売り続けたことです。生活費や事業費に紐づいたお金で買うと、相場と関係ない理由で売らされます。余剰資金で買い、売る理由が生まれない設計にする——これが9年分の授業料から得た答えです。
③ 暴落は「来るかもしれない」ではなく「必ず来る」
9年間で、資産が半分以下になる局面を私は何度も見てきました。買った直後の2017年9月の急落、2018年の崩壊、そしてその後も繰り返された暴落——それでも市場は続いてきました。暴落を前提にした金額設定・分散・心構えについては、次の記事「9年間で経験した暴落5回の記録」で詳しく書きます。
なお、これは投資助言ではなく、あくまで一人の経験者としての振り返りです。買うかどうか、いくら買うかは、必ずご自身の状況と判断で決めてください。
7. よくある質問
Q1. 2.05BTCという中途半端な数量なのはなぜですか?
A. 「予算約85万円で買えるだけ買った」結果です。BTCは小数点以下の単位で購入できるので、数量は予算から逆算されます。
Q2. 今からビットコインを買うのは遅いですか?
A. 分かりません。それが正直な答えです。2017年の私も「もう遅いのでは」と言われながら買いました。ただし「遅いかどうか」より「失っても生活が壊れない金額かどうか」の方が、はるかに重要な問いだと考えています。
Q3. 当時の家族や周囲の反応は?
A. 詳細は伏せますが、少なくとも「賢明な買い物だ」という反応ではなかった、とだけ。2017年の暗号資産はそういう扱いでした。
Q4. 結局、いま何倍になったんですか?
A. 初購入分だけを切り出した「何倍」は、その後の売買やマイニング転戦が絡むため正確には計算できません。投資全体の収支はマイニングの赤字1,120万円を含めて別記事で公開しており、そちらがフェアな全体像です。
Q5. これから始めるなら、最初の一歩は何をすればいいですか?
A. 国内取引所の口座を1つ開設し、数千円分を板取引で買ってみることです。手順と取引所の選び方は「仮想通貨の始め方」「国内取引所おすすめ5選」の記事にまとめています。金額ではなく「当事者になること」が最初の一歩の目的です。
8. まとめ|846,288円のレシートが教えてくれたこと
- 2017年8月13日、2.05BTCを846,288円(1BTC≒41.3万円)で購入した。これが私の投資人生の起点
- 4ヶ月で5倍近い評価額を経験し、その全能感がマイニング2,353万円投資と1,120万円の赤字につながった
- ガチホしていれば約24倍もあり得たが、それは9年分の暴落に耐えた場合だけの結果論
- 得た教訓は「少額から」「売らなくていいお金で」「暴落を前提に」の3つ
84万円のレシートは、利益の記録である以上に、熱狂と後悔と学びの記録でした。9年前の私と同じように、いま画面の前で「買ってみようか」と迷っているあなたの判断材料に、この実物大の記録がなれば嬉しいです。
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